【コラム】第5回「ASTとALTの違いは?」
今回からは、肝機能の主な血液検査項目について、詳しく解説していきたいと思います。
肝機能検査のAST、ALT、γ-GTPは、「逸脱酵素」といって、肝臓が何らかの原因で破壊されたときに、血液中に漏れ出てくる酵素であることは、以前説明させていただきました。
では、これら「逸脱酵素」の違いは何でしょうか?
AST、ALTは肝細胞逸脱酵素といって、肝臓の中の主に肝細胞内に存在し、肝細胞が障害されると値が高くなります。
ASTとALTは分布や含有量、血液中での半減期が異なるため、どちらが優位に高いかをみることで、診断の手掛かりになります。
ASTは、肝細胞のみならず、心臓や筋肉、赤血球などにも広く存在しますが、ALTはほぼ肝細胞内にのみ存在します。
肝臓全体では、ASTはALTの2~3倍多く存在しています。
ですので、ALTが優位に高い場合は肝疾患が疑われますが、ASTが極端に高い場合は心筋梗塞や筋炎、溶血性貧血など肝疾患以外も疑われます。
血中での半減期はASTが約5~20時間、ALTは約40~50時間といわれています。
ですので、急激に肝細胞が破壊される急性肝炎では、肝含有量を反映してAST優位に高値になりますが、慢性肝炎や脂肪肝では半減期の長いALT優位になります。
そして、肝硬変まで進行してしまうと、正常な肝細胞が減少し、逸脱する酵素も減少するため、AST、ALTともに低下し、AST優位になります。
また、アルコール性肝障害では、エタノールによってALT合成が阻害されるため、AST優位に高値になります。
このように、AST、ALTは、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変の鑑別や、アルコール性肝障害の診断などに有用です。
次回は、「γ-GTPとは?」の予定です。