【コラム】第3回「肝臓の機能が低下したら?」
健康診断で「肝機能障害」が指摘されるケースはとても多いですが、この「肝機能障害」とは、実は「肝臓の機能が低下している」という意味ではありません。
一般的な健康診断の血液検査の項目に含まれている肝機能検査は、AST、ALT、γ-GTPです。
これらは「逸脱酵素」といって、肝細胞が何らかの原因で破壊されたときに、肝細胞から血液中に漏れ出てくる酵素です。
つまり、AST、ALT、γ-GTPの値が高いということは、何らかの原因で肝細胞が破壊され、障害が起きているということを意味します。
しかし、肝臓には「代償能」という能力があり、肝臓の一部に障害が起きても、残りの部分がそれをカバーして働くため、すぐに肝臓の働きが低下したり、症状が出ることはありません。
そのため、肝臓は「沈黙の臓器」と言われているのです。
しかし、肝細胞の破壊、再生が長期間続くと、徐々に肝臓の中に線維が増えて固くなり(これを「線維化」といいます)、肝硬変になってしまいます。
肝硬変になると、肝臓の機能は低下してしまいますが、初期の肝硬変では、「代償能」によって、特に症状が出ることはありません。
こうした自覚症状がほとんどない肝硬変を「代償性肝硬変」といいます。
肝硬変が進行し、肝機能がさらに低下して「代償能」の限界を超えると、肝臓が十分に働くことができなくなり、黄疸、腹水、むくみなど、様々な症状が出てきます。
この状態を「非代償性肝硬変」といいます。
次回は、「肝機能の主な検査項目は?」の予定です。